こんにちは。表参道HAKUデンタルクリニックの白です。
今回はむし歯についてのお話です。
むし歯といえば皆さんもご存じ、痛い・しみる・穴がい空いたなど・・・。
歯医者さんにかかる一番の原因です。
でも意外となぜむし歯になる?ということを知らない方も多いとおもいます。
「歯を磨かないとむし歯になる」、「甘いもの食べるとむし歯になる」など経験的にわかることもあるとおもいますが、いわゆる「歯が溶ける」・「歯に穴が空く」原因はミュータンス連鎖球菌という口の中の細菌が砂糖、主にグルコースを酸に代謝することによって歯が溶けてむし歯が進行していきます。
酸というとなんとなく溶けそうだなーとおもいますよね。
理科の実験などでリトマス試験紙で酸性・中性・アルカリ性などを調べたりしました。
ではどれくらい口の中が酸性になると歯が溶けてしまうかというと、歯の表面のエナメル質が溶けてしまうpH(ペーハー)は約5.5と言われています。通常の口の中のpHが6.8~7.0ですからかなり酸性に傾いた状態です。
一度酸性になった状態から30分から40分かけて唾液の緩衝能(中和させる力)により元の状態に戻ります。
ですから一番よくないのはダラダラと甘いものを食べ続けるといつまでもお口の中が酸性状態でむし歯になりやすい環境になってしまいます。
その他、食事由来の酸や摂食障害による胃液由来の酸なども歯を溶かす原因になります。
ちなみに食事由来の代表格がジュースなどの飲料水ですが、この場合pHだけではなく滴定酸度という基準がありコーラなどはpH2.5の滴定酸度0.7に対し、グレープフルーツジュースはpH3.2の滴定酸度9.3とコーラよりも歯が溶けやすい飲み物と言えるでしょう。
ちょっと難しい話になりましたが、なんとなくご理解いただけましたでしょうか。
ちょっと前ふりが長くなりましたがここからが本題です。
まず僕が治療したむし歯の症例を見ていただきましょう。
下の奥歯6才臼歯です。通常の健康保険内でコンポジットレジンでの修復をおこないました。
一見なんともないように見えますが、なんか少し黒い部分が。
ちょっと削ってみると。
↓こんなに大きなむし歯ができていました。これはなかなかご自身では発見できません。
慎重にむし歯をとっていきます。
かなりむし歯の穴は深く、歯の神経近くまで進行していました。もう少し発見が遅かったらおそらく歯の神経までむし歯が達して痛みを生じていたでしょう。
接着材(ボンディング)を使用してコンポジットレジン(プラスティック)で1回で修復しました。
何事もなかったかのようにキレイに修復することができました。お上手ですねー。
このようなコンポジットレジンでの即日修復は歯の削除量も最小限で済み、審美性もよいため保険診療の中ではとても良い治療方法です。(安い・早い・上手い)(^-^)
ところで、なんでこの方はこんなに大きなむし歯ができてしまったのでしょうか?
聞くところ歯磨きは結構しっかりされてたようでしたし、他に目立ったむし歯や治療歴もありません。
もしこの方が歯磨きを怠っていたり、特異的にむし歯のリスクが高い方であれば他の歯にも大きなむし歯があってもおかしくありません。
よくむし歯予防には歯磨きを中心としたプラークコントロールが大事だといわれていますが、実はプラークコントロールでは予防できないむし歯があります。
その名も名付けて「咬合性カリエス」です。(僕が今つけた名前ですが)
咬合とは上の歯と下の歯がかみ合うことで、カリエスとはむし歯を意味します。
簡単に言うと、上下の歯の咬む力によっておこるむし歯です。
経験豊富な歯科医師なら心得ていることですが、意外と若い先生はここらへんの理解が少ないようで見落としがちです。
いわゆるむし歯予防を目的としたプラークコントロールは若い世代にはとても有効です。しかし僕の経験的に30代後半からこのような「咬合性カリエス」が多くみられます。
咬む力というのは唯一僕達歯科医がコントロールできないもので上下の歯が強い力でかみ合った結果表面に細かい亀裂が入り、そこから細菌が侵入して内部でむし歯が進行するものとおもわれます。通常のエナメル質表面が溶けて進行するむし歯と違い内側から進行していくのでわかりにくくむし歯が大きくなってから発見できることが多いのも特徴です。実は歯と歯の間にできるむし歯(隣接面カリエス)の多くは「咬合性カリエス」ではないかと僕はおもっています。
ですからこのような方に「一生懸命歯磨きしてくださいねー」といっても無駄ということです。
物を噛むというのは私達が生きていく上でとても大事なことですが、この咬む力というのが私達が戦う「歯科疾患」の悪の根源だったりするわけです。
うーん、奥が深いですねー。咬む力が強い方、歯ぎしり・食いしばりがある方は要注意です。
「咬合性カリエス」の予防はなかなか難しいですが、定期的な歯科検診で咬み合わせのチェックをお勧めいたします。